task448の日記

散々頭をこねくり回すとこんな仕上がりになります。

負の連鎖はここで止めよう。

うちはすごく複雑だ。

物心ついた頃には「うちは貧乏だ」と気付いていた。

弟は「ゲームが欲しい」「ハンバーグが食べたい」「今度ディズニーランドに行きたい」と、両親に自分の欲を自由にぶつけていた。

わたしはというと、全部我慢していた。

何をするにもお金が必要で、うちにはそのお金が十分にないことを知っていた。

何故気付いたのかは分からない。

でも、うちにはお金がないことを知っていた。

 

 

 

大学へは行かなかった。というより、行けなかった。

お金を出してもらうのが申し訳なかった。

バイトはしていたけど、大学へ行けるくらいのお金は貯めていなかった。

大学は行きたかったけれど、本当に行きたくなった時に自分でお金を貯めて行こうと思った。

 

 

高校を卒後し、7割くらいの同級生は大学へ行った。ずるいと思った。

サークルに入って新しいコミュニティができて、適当に授業を受けて。今までの友達が離れていく気がした。わたしは置いてけぼりで、楽しんでいる友達を見て、街中にいる大学生を見て、いつも呪っていた。ずるいと思った。

 

 

 

それでも不思議と不幸ではなかった。

お金はないけど、いつも楽しかった。

お金がないからいろんなアイデアが生まれた。

ちょっとの贅沢で誰よりも幸せだと感じられた。

 

 

 

一人暮らしをして、結婚をして、

家を出た今もやっぱり実家は貧乏だ。

不満や愚痴はいつもある母だけど、この母だからやってこれたと思う。

 

 

 

 

うちの両親はバツイチ同士だ。

父は2人の子供がいたけど、母は子宝には恵まれなかった。

父が母にゾッコンだったらしい。

家庭を捨て、一緒になった2人。

わたしの母子手帳を見ると、父の苗字と母の旧姓、それから母の前の旦那さんの苗字と、全部で3つ苗字が書かれている。

(あぁ、離婚前にわたしができてしまったんだ)

とここで分かる。理解できたのはもっとずっと後だったけど。

 

 

 

結婚をして、新しい苗字になった。

わたしは4つの苗字を使ったことになる。

すごく贅沢だ。

 

 

 

わたしは両親が好きだ。弟も好きだ。

寡黙な父と、夢見がちな母、ゴリラに似た弟が好きだ。

 

仕事でなかなか家にいない父はたまの休みに遠出をしてくれた。

いろんなところへ、いつも車で出かけた。

ディズニーランドは数え切れないほど行った。外食も多かった。

口数は少ないけど、わたしたち兄弟をそっちのけでいつも全力で遊んでいた。

 

母は起伏が激しく、感情が高ぶりやすい。人より苦労したせいかいろんな感情を持っているし、欲しい言葉をかけてくれる。ファンシーな性格も、辛い気持ちを隠すためだろう。だけどいつもその明るさに救われる。

 

弟に対しては特にコメントはない。

それでもとにかく、弟が弟で良かったと思う。姉思いのいい弟だ。

 

 

 

晴れの日も雨の日も、毎日外に出た。

特に雨の日は弟と2人、レインコートを着て泥だらけになりながらいろんな虫を見つけた。花を探した。

お金はないけど、誰よりも遊び方を知っている。

 

 

 

 

今も十分なお金はないけれど、それでも幸せだ。夫と息子、2人に囲まれて幸せだ。

裕福な暮らしをしてきた夫には、わたしの貧乏遊びを教えてあげる。新鮮に楽しんでくれる夫だけど、貧乏生活ゆえの遊びということは知らない。知らなくていいし、知ってほしくない。

 

 

 

息子にはお金がないことを悟られないようにしたい。

お金がなくても幸せだったけど、できれば余計な心配をかけたくない。

それでも万が一、悟られてしまうことがあるならば「お金がなくても十分幸せだ」と思えるよう、母のような母になろう。